「タイラント」

「えーと……。簡易診療所の警備部員だから、職業は警備員ってことになる、のか？
（小声で）うー、こういうのには何て答えればいいのか、アイラニに訊いておきゃ良かったな……」

「医薬品とかの物資を略奪しようとする奴等とか、医者とかを誘拐しようとする奴等。まぁ、ようすうるに襲ってくる連中と、だけど」

「毎日って訳じゃない。アイラニの決めるスケジュール次第だし、護衛任務だから敵が来なければ戦わない」

「いや、別にしてない。だって、サイボーグがトレーニングしたからって、別に強くなるわけじゃないだろ？ それに、護衛任務が無い時でも、重いものを運ぶから手伝ってくれとか、伝令に走れとか、いろいろ頼まれるんで忙しいし……さ」

「１０歳のとき」

「多いほうだと思う」

「……。１０歳の時から所属してた部隊の隊長と……それから、その隊の兄貴連中に」

「ある」

「……えーと。うーん。無い、のかなぁ……。だって、生きてるしな。あー、まぁ、模擬戦じゃあジョーに負けっぱなしだけど」

「ある」

「ある。殺されかけたってゆーか、死にかけたってゆーか……」

「……うーん。……殆ど無い、かな」

「無いと思う」

「いや。別に無いと思う」

「そりゃ、サイボーグだからな」

「まぁ、サイボーグだから」

「えーと、良くわからないけど、強いんじゃないのか？ だって、今のところ未だ生きてるし……」

「銃とかナイフとか、まぁ適当に。でも、銃は威嚇用かな。あんまり使わない。あ。言っとくが、別に射撃が下手って訳じゃないからな！ 普通に狙えば普通に当たるんだからなっ！
（小声で）そりゃ、ジョーとか隊長みたく精密射撃ができる訳じゃないけど。つーか、あの二人の命中精度は普通じゃないだろ。だいたい、ジョーなんて目隠ししてたって普通に当ててたし、隊長だって、いっつも殆どそっち見てないのに当ててたし……。どう考えてもアレは異常だろ。別に、俺ができなくても変じゃないよな？」

「勿論。何たって、格闘戦用サイボーグだからな」

「無い。使い慣れない武器を使うくらいなら素手で行く」

「……えーと。後退と逃亡は違う…よな？」

「まあ。そりゃ、一応サイボーグだし」

「うーん……。何だろう？ 特に無いと思うけど……」

「布陣とか敵の出方とか、そりゃ、一応は考える。
（小声で）けどさ、戦いが始まっちまえば、作戦とかって、あんまり関係無くないか？」

「別に無い」

「ジョー。絶っ対に、嫌だっ！」

「いない」

「うーん……。特に無いな」

「何の為って言われても……。えーと、その……俺が役に立つのって、これだけだし。ていうか、俺、他に出来ることなんて無い訳だし……。格闘戦用サイボーグな訳だし……。えーと……。
（小声で）つーか、こーゆーのって何て答えればいいんだ？ ジョーだったら、世界平和の為とかって答えるのかな？ ってことは、俺もそう言っときゃいいのか？（悩）」