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印象は全く違う二人のキャラだ。私がウィッチから受ける印象は、ドライなやり手。システマティックで完ぺき主義。チアフルはつかみ所がなく、他者に対して無防備なようで本音の肝心な部分は預けない。描かれ方の差もあるだろうが、とにかく二人にはあまり似たところが無く見える。 にも関わらず、なぜか私にはウィッチもチアフルもかなり似た色彩をその人格の中に有しているように思えてならない。これはなぜか。 思うに、彼らの人格の違いは、現れている表面の見え方に大きな差があるだけだと思う。私は、この二人はとてもウマが合うような気がする。なぜなら、ウイッチとチアフルにはとある共通した人格のイメージがあるからだ。 つまり。二人とも他者の感情的共感ないしは理解に対してほとんど興味を持たない。それを必要としない。個が完全に成立している。そういう印象だ。ここでいう個とは性格上の個性ではない。自律性をさしている。 話は変わるが、上記で挙げた彼ら二名とは対照的なコンビが相剋にはいる。ジョーとタイラントである。この二人もなかなかどうして（笑）特にタイラントはかなり際立った性格上の個性を持っている。といっても、極端に飛びぬけたユニークさがあるとか、人格形成上において巨大な瑕疵があるとか、そういう意味での際立ちではない。飄然としたユニークさなら多分チアフルのほうがタイラントよりは上だろうし、問題ある（？）人格であればクワイトがダントツである。 どちらかというと、タイラントには生身っぽさというか、戦闘目的性が高い格闘サイボーグでありながらどこかに人間としての朗らかさを残している、社会に出て普通に生活を営む姿にあまり違和感がない、いわゆる「普通」のにおいがある。人間くさいというか、高度兵器には本来必要ない陽の部分をその人格に濃厚に残していると表現してもいい。 ジョーもジョーで、番外編はともかく（笑）相剋本編においてもかなり泣くし、無惨な目に遭わされてへこんだり、精神的にかなりキたり。生身の脆さをたいそう正直にさらけ出している。このコンビ、多少の色合いは違っていても、根幹はともに「人間くさい」のだ。人が生きるために必要なシステムである社会に参加、あるいは戻ったとしても、人間としての立ち位置を見失わずに暮らしていける素地がある。 人が人として存在できる根拠のひとつに、豊かな感情表現の能力がある点が挙げられるだろう。にっこり笑うジョー、腹を抱えて笑い転げるタイラント、悲しむジョー、怒りに身を震わせるタイラント。これらの映像は、無理なく頭に浮かべられる。人間の感情の動きをそのまま見せる事に違和感を抱かせないジョーとタイラントは、表面に現れる人格の個性に差があっても、ともに「生身くさい」という人間性の根源は同じ、ほぼ同一に近い。 一方でウィッチが立てなくなるほど大笑いしているシーンは思い浮かべられるだろうか。チアフルについても、喜怒哀楽を表現する力はあるだろうが、どこにも不自然さはないものと言いきれるだろうか。ウィッチはどちらかというと実務性を重んじる傾向があるように見受けられ、人の感情の動きを「人間として生きるには不可欠な要素」とは見なしていないように思われる。むしろ、自分が掲げた理想ないしは目標の達成に、あまり貢献しない無駄なもの、とは考えていないだろうか。 チアフルはたいそう難しいキャラクターで、飄々としていつつもどこかに哲学性をにじませた雰囲気をまとっている。彼は、人間の感情についてどう思っているか、恐らくこうだろうとは私も挙げにくいのだが、とりあえず感じられるイメージ像からは「その必要性を理解はしている、ただし世すぎの手段としての一種ていどであって、人生の潤いとして切に必要と感じている節」は見受けにくい。 ジョーやタイラント、特に後者が支持率において圧倒的なのは、ひとえに豊かな感情表現を持つキャラであるからで、他者の感情的共感を呼びやすい。シンクロしやすい要素をふんだんに有しているせいだろう。人が社会システムの中で生きてゆくには、他者を避けては通れない。そして一定の交流を持たずには済まされない。そのため、人は意識しているしていないに関わらず、心のうちでは他者からの理解を欲する。 が。稀に全くないしはそれに近いまでに理解を求めない者も確かに存在する。たいていは理解を示されてあからさまに不快を感じたりはしないのだが、気性によってはむしろ理解を迷惑がる、そこまでいかなくとも理解や評価が示されなくても「それがどうした」とどこ吹く風でいられる。そういう気質の主もいる。 さまざまな要素が絡み合った結果、他者からのシンクロニティを求めない性格が出来上がるのであろうが、そのひとつに自己完結性の高さが多く含まれると、私は思う。 ウィッチもチアフルも、こちらのタイプの人間だと思うのである。ジョー＆タイラントのコンビとは全く対極、人くささをあまり持たず（無いわけではない）、いわば職人気質的に仕事一筋のウィッチ、周囲に溶け込んでいるようでその実は自分の本音を巧みに隠し通し、玄妙なまでに飄々たる姿勢を崩さないチアフル。どちらの気性も他人の感情的共感なり関心なりを惹く要素とは言いにくい。 ある意味で、超絶してしまっているのかもしれない、その完結性自律性の高い二つの人格。いささかパラドックス気味な表現になるが、ともに感情の交流を高く評価せずひたすら快適に我が道を行きたがるがため、かえってお互いに対して共感というより共鳴、ないしは同志的な印象を、無意識であっても受け合う。はっきり、この二人は人生における志向が似ていて、意図しないうちに同じ方角を歩いている、だが表面に現れるものが違いすぎるので寄り添って二人三脚を、という発想には至らない。体の存在位置は遠く、心の距離は近い。そういう関係にあるように思えるのだ。 不思議なウィッチとチアフル。彼らを読み解くには、まだまだ修練が必要かもしれない（笑）
2007年8月13日 りゅう
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