五月ともなると、朝は、随分と早い時間にやってくる。
眠い目を擦りながら外に出れば、東の空が仄かに白みかけていた。
水気を含んだ清かな風が、夜を洗い流していく。
湿った土を踏みながら、僕は海へと向かった。

切り立った崖の先端、海に張り出した岩の上に、僕は独り立つ。
眼下には藍の海、頭上には蒼の空。
はるか彼方の水平線が、ほんのりと暁に染まって。
遠いその向こうから、今日という日は、やってくる。

流れる時に切れ目は無い。
朝も昼も夜も、昨日も今日も明日も、遥か過去から未来の果てまで、ただ続いていくだけで。
本当は、どんな区切りも無い。
僕が生まれた日にも、“僕”が死んだ日にも。
そして、“僕”が生まれた日にも。
何の印も、付けられてはいなかった。

それでも僕は、朝を待って。
そして僕は、夜を迎え。
つなぎ目の無い“時”に、紅い印をつけて想う。

遠い彼方の向こうから、今日という日がやってくる。
暁に染まっていた水平線が、その瞬間、金色に光って。
眼下の海は碧く煌めき、頭上の空は青く輝く。
崖の上に独り立つ、僕の冷たい身体に、太陽の熱が押し寄せてくる。

切れ目無く続く、僕の時間。
けれど、僕はひとりじゃない。
朝陽に照らされた樹々の緑を眺めながら、僕は家に帰る。
今日に印を付けてくれた、仲間達の眠る家に。

おはよう、みんな。
いい朝だよ。

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