その日、世界を支える柱たる天地珠が、砕け散った。

大気が鳴り大地が震え、陽の光が陰り、そして……
何が起きたのか判らぬヒトの前に、そのモノ達が現れた。
後に『魔』と呼ばれるそのモノ達は、異界からの侵略者であった。
彼等は禁断の秘術を用いて二つの世界を一つに繋げ、ヒトの世界へとやって来たのである。
ヒトの世界を、己がモノとする為に。

ヒトの指導者達は、あらゆる利害を度外視して協力し、ありったけの戦力をかき集め、魔のモノに戦いを挑んだ。
しかし。
彼等の操る強力な『術』の前には、総ては無駄だった。
大地を埋め尽くすほどの軍勢も、僅か七ツの魔によって灰燼と化し、ヒトの国々はことごとく滅び去った。
最早、ヒトに対抗する手段は何一つとして無かった。
ヒトは世界の主の座を追われ、魔の従僕としての身分を受け入れるしか無かった。かつてヒトが世界の主として総ての動植物を従えたように、魔が、ヒトとヒトの世界のあらゆるモノを従え、支配する事となったのだ。

かくしてヒトの世界は、終焉の日を迎えた。

あれから、一体、どれ程の時が過ぎたのだろう？

過ぎ行く日々を数えるモノとて無く、ヒトが世界の主であった頃の事を知るモノは勿論、それを知るモノの話を直接聞いたモノすらも、もう居ない。
気まぐれにヒトを狩る魔の存在を当然と思い、近しいモノが殺される事への怒りも哀しみも無く、知識を伝える事も諦め……